バングラのソーシャルビジネス最前線

ソーシャルビジネス先進国のバングラデシュ

人材育成・雇用創出・事業創出は、発展途上国にとって、とても貢献度の高い分野です。ソーシャルビジネスに取り組む日本のベンチャー企業も年々増加しています。

2016年9月5日付け毎日新聞による報道

バングラデシュの無職の若者にコンピューターのプログラミングを教え、同国の失業対策につなげる福岡発の「ソーシャルビジネス」が軌道に乗りつつある。福岡市出身の会社経営者の男性らが首都ダッカで昨年スタートさせたプログラミングスクールには同国内での期待や関心も高まっている。

 

プログラミングスクールのアイデアは、福岡市中央区でバングラデシュカレー店を営みながら、母国の無医村に病院を建てるための支援活動をしているズルフィカル・ハイダルさん(45)と、ハイダルさんの店の常連客で同市出身の会社経営、井原啓登(ひろと)さん(50)=横浜市在住=の間で生まれた。きっかけはハイダルさんから聞くバングラデシュに興味を持った井原さんが2年前に同国を訪れたことだった。街には職を持たない若者があふれていた。「彼らのために何かできないか」。

 

そう思ったのは父親を中学生で亡くし、裕福でない家庭で育った自らの境遇と重なったからだ。九州大を卒業し、銀行に就職した井原さんは「母のお陰で学ぶ機会を得て、今の生活を築けた」と語る。
銀行を辞めた後、企業経営に携わったり、自ら起業したりしてきた井原さんが考えたのが、若者がスキルを身につけ、自らの力で収入を得る仕組みの確立だ。

 

福岡市にプログラミングスクールの運営会社を設立し、昨年6月からダッカで授業を開始。そのスクールで一定の技術を習得した卒業生を現地に作ったグループ会社で雇用し、日本で井原さんが受注したウェブサイト製作などの仕事を任す枠組みにした。これまで数人を採用した。

 

スクール運営には、同じくハイダルさんの店の常連客で、福岡県朝倉市出身の時川鉄平さん(35)も協力。時川さんがフィリピン・セブ島で経営するIT会社のスタッフが講師を務め、セブとダッカの教室をつなぎ、オンラインで授業する。4人が卒業し、現在16人が学んでいる。

グラミン銀創設、ユヌス氏も関心

この取り組みに対して貧困層への無担保融資を続けるグラミン銀行を創設し、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏(76)が関心を寄せている。井原さんとハイダルさんは今年1月に面会し、ユヌス氏は「オンライン教育なので、農村など全土に広がる可能性を秘めている」と評価したという。共同で同様な事業を実施することも検討している。

 

飲食店で発生して日本人らが犠牲となった7月の人質テロ事件で活動継続を危ぶむ声も出たが、井原さんは「支援を途絶えさせてはいけない」と強調。ハイダルさんも「若者の雇用を創出することでバングラデシュの経済発展につながる」と期待している。【山下俊輔】

引用元:毎日新聞

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